小山ゆうの『愛がゆく』を漫画喫茶で読んだ。小山ゆう、絵は全然好きではないんだけど話がものすごい面白い。
『愛がゆく』は拾われた赤ちゃんが実は未来から来た超能力者で、その子を殺そうとす未来から来た人間たちと壮絶な戦いを繰り広げていく物語だ。その子は未来では世界を滅ぼす悪魔ということになっており、それが理由で殺しにくるというわけ。その子は人間として暖かい人々に育てられ、すばらしい若者になっていく。そして…。
てな感じなんだけど、小山ゆうの漫画っていつも一緒なんだよね。そこがすばらしい。主人公の少年なんて、もろに『がんばれ元気』の主人公と一緒だし、その他のキャラも他の作品のキャラと余裕で入れ替えがきく。そしてこの作品のポイントは明らかに小山ゆうによる、永井豪『デビルマン』へのオマージュって所だ。
まず途中から悪魔と呼ばれる少年(そのシルエットはどう見てもアモン)が全世界的に負われる身となる所で、暴徒化した一般人が少年を探して匿われている家に入ってくる所なんて『デビルマン』の最終話そのもの。そして主人公の彼女の名前は「未来(みき)」。更に途中で未来人がこっそり人体実験している病院の名前は「牧村医院」。その他、とにかく『デビルマン』へのオマージュに溢れている。
違うのは、『デビルマン』が暴徒に襲われ皆殺しになるのをクライマックスにしているが、この作品はその後を丁寧に描いている点だ。得意の残酷描写、自己犠牲描写は満載で最高なんだけど、『デビルマン』よりも「救い」をテーマに物語が進んで行く。きっと『デビルマン』を読んで、インスパイアされた小山ゆうが「俺ならこう描く」って思って描いた作品なんだろうね。
この作品も他の小山作品と同じく、決して「勧善懲悪」ではない世界、限りなくグレーゾーンが多い世界を描こうとしている。悪とされている側にもそれなりの理屈があって、主人公はたまたま善と呼ばれる側に大義を持って立っているだけで一体どちらが正しいのかは分からない。一応物語だからそれなりの結末を迎えるのだけど、グレーゾーンはそのままほって置かれている。『あずみ』もそうなんだけど、非常に難しい主題を描ききっていてなかなか共感できる作品だ。
描かれた時代が中途半端(80年代初頭)なだけに、珍妙な未来設定や武器はお愛嬌。ある意味非常に味わい深いのでそこのところも要注目。光線銃(古っ)の形なんか爆笑もの。あとクライマックスで未来人から現代人がランク付けされるとおでこに数字が付くのも爆笑。
小山ゆうの他の作品もやっぱりものすごい面白いので読んでみる事をお勧めしますよ。特に『がんばれ元気』と『あずみ』ね。