2012年2月26日

スペースアドベンチャーコブラ

寺沢武一先生の『コブラ』が子供の頃から大好きだ。とにかく全てが格好良い。物語も面白かったし、コブラのセリフと行動がいちいち格好良くて、男ってこうだよなあと子供心に思ったものだった。もちろん半裸でナイスバディのお姉さんたちにも相当反応していたけども。

コブラはまず最初に劇場版アニメとして公開された。その時のコブラの声優は確か松崎しげるだったはず。その後TVアニメになって声優は野沢那智に変わった。もちろん野沢那智の方がぴったりだった。野沢那智亡き今、今後コブラは誰が演じるのだろうか。気になる。

今見ると実はパクリ、と言うかアイデアソースが分かってしまう所も多いのだけど、それでも色褪せない面白さがあると思う。当時は当たり前だけど小学生だったので色々分からなかった。無知って本当に幸せだ。

でも連載当時は70年代後半な訳で、その当時でファンタスティック・プラネット、HEAVYMETAL、フィリップ.K.ディック等のSFをがっつりと自分の世界観に入れ込むことができた漫画家なんていなかった訳で、やっぱりすごい。

そして寺沢武一先生は絵がものすごくうまい。本当にどうしたんだってくらいうまい。ほぼ完璧なデッサン力。真似ができない。事実子供の頃からコブラは好きだったけど、一度も真似して描いたことがない。だって描けないのが分かっているから。そして20年以上前から着色などにMacを導入している所もすごい。今でこそコンピュータで着色なんて当たり前だけど、当時それを知った時びっくりしたものだ。

寺沢武一先生は数年前に脳腫瘍を患った様だけど、見事に復活され今も執筆されている。がんばっていつまでも描き続けて欲しい。そしてアレクサンドル・アジャ監督で映画化も予定されているみたいだ。イメージ写真が格好良すぎて期待せざるを得ない。『コブラ』はもっと評価されても良いと思うんだけどな。

2012年2月22日

恐怖新聞

何故か『恐怖新聞』が自分の中で来てしまい、恐らく30年ぶりくらいに読みなおした。色々凄かった。

『恐怖新聞』と言えば、つのだじろうの名作心霊漫画だ。俺達世代は子供の頃この漫画にさんざん震え上がらさせていただいた。これと『うしろの百太郎』は本当にお世話になった気がする。とにかく部屋の本棚に背表紙が見えるだけで恐ろしかった記憶がある。このロゴはずるい。

が、久しぶりに読みなおした『恐怖新聞』はびっくりするくらい出鱈目で、ニセ科学で、全く怖くなく、どちらかと言うと爆笑の連続で読める作品になっていた。当時の小学生が興味を持っていた、心霊、UFO、超常現象等を扱って巧みに恐怖を演出しているのだけど、今読むと全く怖くない。もちろん自分が大人になったからというのも大きいのだろうけど、それ以外にも理由はありそうだ。

そもそもこの漫画が連載当時と現在では情報の量が違いすぎる。今の時代はやることが多すぎて、心霊現象になんてかまっている暇はないのではなかろうか。それに心霊現象よりも恐ろしい現象が日本では実際に起きてしまって、まずそちらに対する恐怖が拭えなくなっている。

漫画としてはさすがに構成がうまい。こんなうまい漫画だったとは当時は気が付かなかった。絵も丁寧で、確かに色々な意味で怖い。全体の物語は何気に悲惨で救いようがない。読んでいて思ったのだけど、ここまで悪霊が強くて、現実世界に干渉できるのならば、この世は悪霊に支配されている...。その辺りも設定が弱くて出鱈目なんだよなあ。

その他も明らかにパースがおかしな絵、どう見てもダウンタウンの浜ちゃんにしか見えないキャラクター等突っ込みどころが満載でとても面白かった。今『恐怖新聞2』を読んでいるのだけど、コマ割りや絵柄が相当今風でダイナミックな感じになっていて進化の仕方がすごいと思った。うしろの百太郎も読みたい。

2012年2月17日

ガンツ33巻

もう33巻ですよ、『ガンツ』。一体何年読み続ければ終わるのだろうか。恐らく継続して読んでいて一番長い作品は諸星大二郎先生の『西遊妖猿伝』で、次は『強殖装甲ガイバー』だと思う。その次が多分、『ガンツ』。もういい加減終わって欲しい。『西遊妖猿伝』は終わってほしくないけど。

33巻を読んで気がついたのだけど、巨大宇宙人が出てきてからの物語は『ファンタスティック・プラネット』なんだね。この巻でヒロインである多恵ちゃんに埋め込まれたリモコンなんて『ファンタスティック・プラネット』そのままだし、よく見ると巨大宇宙人の顔もドラーグ人に似ている。成程、アイデアソースはそこですか。となると、最終回も同じような話になるのかなあ。

ここ数巻のガンツはとにかく気持ち悪いシチュエーションやクリーチャーを出すことに始終してしまっていて、もういい加減終わってくれよと思ってしまう。全然物語を描いていない。元々そこまで物語がある漫画でもなかったのに、技巧に走りすぎと言うか、どうにも重要な部分が置き去りにされている気がする。まとめて読むと印象が違うのかもしれないけど。

絵はすごく上手いし、ガンツのハードスーツ、巨大宇宙人のバトルスーツなんか異様に格好良いのだけど、とにかくいい加減終わらせて欲しいという、読み手が疲れて来ているという印象。せめてあと5巻以内に終わらせてくれ...。

2012年1月31日

のりりん

生まれてから今までそれなりの数の自転車に乗った気がするけど、一番高い自転車は2万ちょっとだったと思う。基本的に駅や近所までの移動手段だと思っているし、安くてもそんなに問題はない。乗り物はバイクや車の方が興味があるし。

鬼頭莫広の『のりりん』はロードバイクを題材にした漫画だ。自転車嫌いだった主人公が、たまたま関係したラーメン屋の女主人に半ば騙されてロードバイクに乗り始める物語。正直な所、鬼頭莫広でなければ絶対読まなかった漫画。でも、読んでみるとさすがに面白い。

最近3、4巻が出ていることに気がついて購入し読んだ。今回はロードバイクの値段、問題点、パーツ等に関しても詳しく、わかりやすく解説がしてあってなかなか興味深かった。確かにそれなりの値段(15万程度)かけるととても楽しく遊べそうな気がする。

漫画としては構成がうまいのでとても楽しめるし、ロードバイクに少し興味は湧いた。が、家には置くスペースが全くないし、乗って行く場所もない、そして同好の士もいない俺には必要ないものだなあとも思った。同じロードバイク漫画であるスピリッツの『かもめチャンス』はどうしようもなくつまらないけど、『のりりん』は自転車に特に興味のない俺にも面白く感じられた。

 

2012年1月26日

クリスチャン・ルブタンの本

クリスチャン・ルブタンの本が欲しかった。20周年記念だかで出ていた限定本。値段は14000円とお高いが、なかなか素敵そうな本であった。

元々靴は足を守るものだったのだけど、時代が進んでとてもフェティッシュな装身具に進化した。もちろん俺は男なのでそういった靴は履かないけど、デザイン、アートとして見るとルブタンの靴はとにかくデザインがフェティッシュでとても面白い。

有名なのはアウトソール裏が真っ赤なレディースシューズだけど、これは偽物、真似物、入り交じってすっかり手垢が付いてしまった感がある。でもデザインとしては強烈にフェティッシュ、かつゲテモノでもし自分が女子であったらこんな靴を履きこなしたいと思わせる。

で、限定本。どうやら去年末くらいに出ていたようで、すっかりノーマークであった。最近直営店に電話して聞いてみたけど、当然在庫なし、再販なし。あとはオークションだろうけど、どうせプレミア付いているだろうから諦めるかな。

という訳で代わりに石原豪人のイラスト集でも買おうかと。石原豪人はすごいよね。徹底的に絵がうまいし、イメージ力もすごい。相変わらずセレクトが滅茶苦茶だな。

2012年1月 7日

惡の華5巻

今現在読み続けている中で一番面白いと思っている押見修造『惡の華』の5巻が発売された。相変わらずとても面白いのだけど、びっくりしたのが絵がとても上手くなっているということだ。まるで『アゴなしゲンとオレ物語』の1話と最終話位の差がある。当たり前だけど、絵は描けば描くほど上手くなる。もちろん限界はあるのだけど。

5巻で物語のテーマが明確になった気がする。登場人物を見ているとそれが何となく見えてくる。空虚でつまらない町に何も見いだせないでいる仲村さん(明らかにサディスティックな性癖を持っている)、何もない空っぽの、だけど何か変化を起こしたいフラストレーションが溜まっている文学少年の主人公、 美人でお嬢様、かつ教養もありそうな、主人公の事が大好きな佐伯さん。基本的に登場人物はこの三人だけ。舞台を田舎の小さい町に設定しているのと相まって、面白さに拍車をかけている気がする。

仲村さんは変化と道標の象徴。佐伯さんはどう見ても主人公を引き止めて繋ぎとめようとする田舎町の象徴。佐伯さんもなかなかどうして激しい性格の美人なので魅力がある。何と言うか、田舎町にも魅力があるということなんだろう。

その2つの価値観の間でどう主人公が立ち振舞っていくのか。どういった結末を迎えるのか。現状の物語を鑑みると、破滅的な結末を迎えそうだけど、こうなったら是非滅茶苦茶にして欲しい所。先が本当に楽しみだ。

そして仲村さんの見た目の邪悪な綾波レイ化が止まらない。綾波レイの見た目や性格ってやはり魅力的なんだろうね。そう言えば高橋葉介先生の作品にも思いっきり綾波レイな見た目のキャラクターが出てきたな。

とにかく『惡の華』の打ちひしがれる感じが大好きだ。何度も書いている気がするけど、作品にはどうしようもなく傷つけて欲しい。心を丸ごと持って行って欲しい。何でこうなるんだ、という世界の理不尽を作品という形で提示して欲しい。それが俺の見たい作品だ。『惡の華』、素晴らしい。

2011年11月28日

ヒストリエ7巻

『ヒストリエ』7巻を買った。月刊連載なので1年半に1冊ペースなので、毎回話を忘れてしまうのが玉にキズだけど、相変わらずとても面白い。

物語、世界観は当然のこと、演出がとても独特でオリジナリティがある。作者独自の時間が流れていると言うか。全体的に「真っ白」な印象が強い画なのだけど、それが緊張感を生み出している。何だろう、間を作るのがとても上手い漫画家ってことだろう。

今の漫画、特にジャンプ系の作品はひたすら間を埋めてくる、つまり情報量を多くして見せているように思える。漫画は好きだけど、どうもジャンプ系が苦手なのは恐らくそれもありそうだ。

デザインでも絵でも映画でも、スカスカなものって結構好きだ。ただのスカスカではなく、「粗密」がちゃんとバランス良くあるもの。そう考えると『ヒストリエ』、岩明均の作品ってものすごく粗密のバランスが取れている。本当、この作者の作品はどれもハズレがない。

2011年9月28日

エルフェンリート

最近すっかり漫画ブログ化しているけれど、またもや漫画。岡本倫『エルフェンリート』を読んだ。実は10年くらい前に1巻だけは買って読んでいて、何となくその後は読まなかったのだけど、今回やっと読破した。

ツノのある新しい生物と、人間の戦いがメインの話なのだけど、とにかく人体損壊描写が満載でかなりバイオレントな漫画だ。血しぶき飛びまくり。四肢切断もしょっちゅう出てくるし、幼児虐待等々、とにかく酷いシチュエーションのオンパレード。が、ツノのある生物は全員美少女だったり、主人公の住む家には何故か美少女が続々と集まってハーレム状態だったり、妙にエロいシーンが多いし、ナンセンスな笑いが突然挟まってきたりと、なんというかオタクの願望全部詰め込みました!という感じがある。

本当に色々な要素が詰まっているのだけど、全体的に薄味。これは悪い意味ではなく、薄味になったことによって残虐な描写が記号的に見えるし(絵がうまくないせいもあると思うが)、物語の骨格が見えやすくなっている気がする。妙に安っぽい感動も、全体的に薄味なのでまあ許せる感じだろうか。

世界観は確実にエヴァ以降。地下世界があったり、ルーシーというツノのある生物の覚醒シーン等は思いっきりエヴァであった。あと、所謂、「イヤボーン」系。竹熊健太郎先生言うところの。追い詰められると、「イヤー!」で、超能力を発揮して敵を「ボーン」とやっつけちゃうやつね。

全体をして実は結構面白い漫画であった。恐らく作者の力量というよりも、確実に偶然がいくつも上手く重なったおかげで、とても良い作品に仕上がった感じだろうか。こういった作品も全然ありだと思う。今連載中の『ノノノノ』はどうなんだろう。読んでみたい。スキージャンプの話みたいだけど。

 

2011年9月25日

蛮勇引力

山口貴由『蛮勇引力』読了。他の作品と同じく、最後まで異様なテンションで駆け抜けた作品であった。

舞台は近未来。神都東京は神機力という電力みたいな力で支配されている。と言うかこれ、思いっきり原発を思い起こさせるんだけどね。人間と神機力を融合させようと企む、徳川惑星と戦う主人公、由井正雪。都知事の名前は石原。やっていることはホームレスの皆殺し。世相を反映しているけど、とにかく滅茶苦茶で面白いとしか言い様のない物語。

当然、内蔵は出まくりで残酷描写盛りだくさん。全体的なイメージは『覚悟のススメ』と同じ。永井豪の「バイオレンスジャック」のテンションを下げないまま最後まで行く感じだろうか。この作品は特に永井豪度が高いように感じた。似ているキャラも出てくるし。

読んでいて面白かったのは、登場人物の頭が妙に平らなこと。前頭葉がなさそうと言うか。すごく面白い見た目をしている。昔ながらの濃い少年漫画的な絵柄と言えばそうなんだけど、圧倒的な画力と構成力で無理やりねじ伏せられている感じだろうか。

いずれにせよ、とても面白く読ませていただいた。何だろう、永井豪の正しい解釈と言うか、こういうのが読みたかったんだよ!という感じ。今、本当にどうでも良いような漫画が多すぎるから。ところでこの漫画、どうやら絶版になってるね。

2011年9月13日

覚悟のススメ

山口貴由著『覚悟のススメ』、正に壮絶という言葉がぴったりな作品であった。同じ作者の『シグルイ』よりも少し前の作品なのだけど、それに続く様な壮絶かつ異様極まりない物語。

大規模な地殻変動が起こった後の関東で、原発から放射能が降り注ぎ(この辺りはっきりは言っていないけど示唆している)世界。零式外骨格を纏った主人公が、人類を絶滅せんとする実の兄と戦う。兄である散(ハララ)は戦術鬼という異形の軍団を率いて、弟である葉隠覚悟と内蔵が出まくりの戦いを繰り広げる。ここまで内蔵が飛び出す少年漫画は今までになかったのではないか。毎回ほぼ100%の確率で内蔵が飛び出している気がする。すごい。

外骨格零の見た目も異様に格好良い。メタリックな仮面ライダーアマゾンという感じで、ビカビカなんだけど中身は触手でウニョウニョしているという気持ち悪さ。散が纏う外骨格霞は何だかキカイダー01とイナズマンを足したような、つまり石ノ森調。すごく格好良い。ウニョウニョ辺りは、ちょっと『強殖装甲ガイバー』っぽくもある。

後半に行くに連れ、兄と弟というより、デビルマンにおける不動明と飛鳥了に見えてくる。顔つきは手塚治虫みたいになって行くし、敵の本丸Gガランは横山光輝のロボの様。つまり俺達世代の色々な漫画要素が混じっているのだけど、ものすごくオリジナリティがあるというすごい作品だ。色々素敵な要素をぶち込んで、熱さ、前のめりの勢い、エログロを入れたら強烈なオリジナリティが出ちゃったという感じだろうか。

ヒロインの堀江罪子もとても素敵だ。最初の頃に比べると後半戦、特に魔人モード(ただ髪の毛を切っただけ)辺りになると、すごく太っている。どんどん吾妻ひでおの美少女体型になって行く辺り、とても素敵に見えた。常に体操服(ブルマ)やスクール水着を着ている、エッチさにも注目したい。

とにかく全体の情報量が多すぎて、文章を書いていても何を書いているのかさっぱり分からなくなってしまった。色々な名作漫画要素が入っていて、時節ニヤリとさせられるけど、強烈なオリジナリティ。『シグルイ』と違ってギャグも満載だし、と言うか全体的に悪い冗談みたいな物語なんだけど、一読をお勧めしたい。爆笑できる。

大ゴマで「覚悟完了」とか言われると最高に興奮した。大ゴマが多く、そこも勢いとオリジナリティにつながっている気がした。同じ作者の『シグルイ』もすごいのでオススメ。70年代あたりの熱さを正しく継承している名作であった。

 

2011年9月12日

ファイト一発充電ちゃん

ここの所時間を持て余しているので漫画ばかり読んでいる。8月中旬くらいまでは結構忙しかったので、まとめて休みをとっている感じだ。

という訳で夏の漫画祭で今回は『ファイト一発充電ちゃん』を読んだ。この作品、アニメがすごく良かったので漫画も読みたいと思っていた。

物語は並行世界からやってきた「充電ちゃん」と呼ばれる、元気のない人をコンセントぶっ差して元気にする女の子達の物語。ま、何と言うか設定はそれだけで実に簡単な物語。でもそこにエッチ要素が加わって、絶妙な化学反応を起こしている。そう、エッチは大切!

ヒロインのプラグもなかなか可愛らしいのだけど、とにかくツンデレキャラの相棒、アレスタがとてもよろしい感じだ。デコッパチ、眼鏡、巨乳、おまけにツンデレ。なんというフルハウス。漫画としてみても結構うまくできていて楽しめる。同じ作者の『Kiss×Sis』が結構苦手だったけど、充電ちゃんは行ける。

しかしながらアニメのクォリティ、エッチさには何故か原作は勝てていない。なので、アニメ版をオススメしておきます。漫画もおもしろいのだけどね。

 

2011年8月31日

テルマエ・ロマエ

いつの間にか8月も終わり。気候も随分と秋らしくなってきた。秋と言えば読書。秋を一足先に感じるために漫画を読みまくっている。やっぱ、読書っすよ!

読んだのは、ヤマザキマリの『テルマエ・ロマエ』。ローマ時代の浴場技師が何故か溺れると現代の日本にタイムスリップして、(主に温泉などの風呂に)カルチャーショックを受け、そのインスピレーションでローマの風呂をどんどん素晴らしい物にしていくという、ギャグマンガ。そう、ギャグマンガなんだ、これ。

全体的にとても面白かった。とにかく着想が面白い。全体的には丁寧なんだけど、ギャグマンガとしては普通。でも着想がとてもナイスなので、すごく新鮮に感じた。間の作り方もとても上手だし。そしてこの人、絵がなかなか上手い。どうやら十代の頃からイタリアに渡って、絵を描いたりして鍛えていたらしい。女性らしく決め細やかな絵、展開、独特の間、全てのレベルが高い。

3巻の表紙はあのラオコーン像(シャンプーハットを被らされている)だったりして、さんざんデッサンで描いたなあって思ったよ。ギリシャ時代やローマ時代って俺達みたいな予備校でデッサンを学んだ人間にとって、実は結構馴染みが深かったり。

読む前はすっかり歴史物だと思っていたのだけど、良い意味で期待を裏切られた感じ。この風呂ネタだけで何処まで行けるかが楽しみ。

2011年8月29日

なるたる

鬼頭莫宏『なるたる』を読んだ。鬼頭莫宏先生の漫画を初めて読んだのは、『ぼくらの』だ。その後はまってしまい、『なにかもちがってますか』『のりりん』と読んだ。そして『ぼくらの』以前に描かれた『なるたる』を読了した。

基本的には『ぼくらの』と物語は同じ。特別な力を手に入れてしまった少年少女達が酷い目にあって、世界がぶっ壊れる物語。登場人物も相変わらず、木偶人形みたいな成長しきれていない、ガリガリな少年少女。トゲトゲでササクレ立っている。見てるだけで痛々しい。

何と言うか、確実にエヴァンゲリオンフォロアーなのだけど、更に冷たくして感情を無くしたような世界観が心地よい。かなり残酷で酷いことが起きるのだけど、全体的に白い世界、精神病院みたいな世界だから何だか納得させられてしまうと言うか、とても独特なのだ。思春期の子供の精神世界と言うか。

評判ではとにかく酷くて、欝漫画とか言われているようだけど、俺は特にそうは思わなかったかな。感覚の違いかもしれないけど。確かに起きている事柄は目を覆うような酷さがあるのだけど、その裏に全体の物語なりコンセプト、作者の言いたいことがはっきりと見て取れるから、そういった描写も必要に感じる。裏にある骨の様なものがなくて、ただ残酷なだけだと全然面白くない。よくあるよね、ただエロいだけの漫画とか。

鬼頭莫宏の作品は確かに人を選ぶのだけど、多分誰しも「世界なんて滅んでしまえ」と思うことがある訳で、その辺りの精神構造をうまくついてくる物語を描ける漫画家ではなかろうか。そして『なるたる』は思いっきり『寄生獣』の影響を受けている。主人公にくっついてくる竜の子の造形とかそのまま。

更に登場する車のマニアックさもすごく良い。マスタングマッハ1とかカマロとか出てくる。戦闘機も好きそう。そういった細部のディティールもとても楽しめた。

そう言えばこの漫画、長らく絶版だったらしく一時期は相当プレミアが付いていたらしいけど、今は普通に買えるようになっている。アニメもあるらしいけど、未見。

2011年8月24日

愛と誠

ここの所暇さえあれば漫画を読んでいる。元々漫画は大好きなのだけど、今は正に漫画ブームだ。

そんな中、梶原一騎×ながやす巧の『愛と誠』を読んだ。大学か高校の時の授業中に何故か回ってきたので最初の方だけ読んだ記憶があったのだけど、ここまで壮絶だとは思わなかった。凄すぎた。話の辻褄なんてまるで無視したかの様に、勢いだけで突き進む物語。素晴らしすぎる。

当然物語なんてあってないようなもの。ひたすらいい加減な熱さのみで突き進む、デタラメさ。高校生が車を運転したり、死んだはずの影の番長が思いっきり生きていたり、その後影の校長というのが出てきたり、墓石が突然飛んできたりとやりたい放題だ。

そもそも「影の校長」ってなんだよ。普通に学生だし。その影の校長は後半に行くに連れ、身長が何故かどんどん伸びて最後の方は推定5メールくらいになってる。最初から異様にテンションの高い物語だったのだけど、最後に行くに連れどんどん破綻していく所も見どころだろうか。テンションが持続できなかったという素晴らしさ。物語が大きくなり過ぎる。

漫画ってどうしてこうの方向に進化しなかったのだろうか。今の漫画は洗練されすぎている。中途半端に「仲間が大事だ」とか、そんなのはっきり言ってどうでもよろしい。このひたすら熱さだけで突き進む感じがあれば、世の中は変わっていたのではないだろうか。少なくとも俺が小学生くらいの時まではこの感じがあったはず。『ブラックエンジェルズ』とか。あれも酷かった...。

ひたすら突っ込みどころしかない『愛と誠』。当時の時代背景もあれど、本気で素晴らしいと思ってしまった。今から、「番長」が流行る!...はず。このデタラメさ、強引さ、熱さはすごいの一言なので、是非ご一読されたい。